企業経営において避けて通れないものの一つが「税務調査」です。
突然の税務調査の通知に戸惑うことも多いですが、税務調査の流れや必要な書類について正しく理解しておくことで、過度な不安を抱かずに対応できるようになります。
この記事では、税務調査の基本的な流れや調査範囲などを解説いたします。
税務調査とは?
税務調査とは、税務署または国税局が法人に対して、正しく税務申告が行われているかを確認するための手続です。
主に法人税、消費税や固定資産税などの申告内容に不備がないかを確認し、過少申告や無申告、不正計上などがあれば是正を求められます。
調査は任意調査と強制調査に分かれており、通常は任意調査として通知された上で実施されます。
税務調査が実施されたからといって必ずしも脱税が疑われているわけではなく、確認の一環として行われることもあります。
税務調査の流れ
税務調査の基本的な流れは、事前通知、実地調査、調査結果といった段階に分かれています。
まず、税務署から調査の実施を知らせる「事前通知」が行われます。
この通知では調査日や対象税目などが伝えられ、調整の上で日程が確定します。
連絡が入るタイミングは、一般的に税務調査の2週間前ごろが多いです。
通知を受け取ったら、必要書類を用意し、顧問税理士がいる場合には税務調査の実施日程を連絡します。
次に、税務職員が会社を訪問して帳簿や領収書、契約書などを確認する「実地調査」が行われます。
調査の期間は1~3日程度が一般的ですが、法人の規模や内容によっては延長されることもあります。
調査のはじめに税務署から質問が行われ、決算書や帳簿書類等の確認に移ります。
実地調査の後日にも、税務署から指摘や質問を受けたりすることがあります。
最後に、調査結果として次の3パターンがあります。
- 「申告是認」・・・なにも申告に問題がない
- 「修正申告」・・・税務署の指摘を認めて自分で申告する
- 「更正」・・・税務署の指摘を認めない場合に、税務署が課税処分を行う
税務調査に必要な書類
税務調査では、会社の財務状況や取引内容を確認するための各種書類が求められます。
主に次の書類が挙げられます。
- 帳簿類・・・仕訳帳、総勘定元帳、売掛長、給与台帳など
- 取引書類・・・領収書、請求書、納品書など
- 決算関係書類・・・損益計算書、貸借対照表など
- 申告書類・・・確定申告書、法人税申告書など
これらの資料を事前に整理し、提出を求められた際に迅速に対応できるよう準備しておくことが大切です。
税務調査の調査範囲
税務調査の範囲は、調査対象となった税目や期間によって異なりますが、法人税・消費税・源泉所得税などが中心です。
通常は過去3年分の申告内容が調査対象となりますが、不正が疑われる場合は5年、重大な不正が疑われる場合は7年までさかのぼることがあります。
さらに、社長の個人的な支出が経費計上されていないか、同族間取引に不自然な点がないかもチェックされます。
税目ごとの専門的な知識が必要なため、調査には税理士の立ち会いが推奨されます。
税務調査の対象になりやすい法人
税務調査はランダムに行われる場合もありますが、特定の傾向がある法人が優先的に対象となることがあります。
たとえば、売上に対して利益率が極端に低い法人や、前年度と比べて急激な売上変動がある法人は注目されやすい傾向にあります。
また、赤字申告が連続している法人や、消費税の還付申告を行っている法人も調査対象になりやすいとされています。
現金商売が多い業種や、個人と法人の資金が混在しやすい業態では、不自然な取引がないか確認されやすくなります。
取引先や元請会社が調査対象となったことで、関連法人として波及的に調査されるケースもあります。
日頃から帳簿管理を適切に行い、不明瞭な処理を避けることが、調査リスクを減らす第一歩です。
税務調査のリスクを減らす方法
税務調査のリスクを減らす方法には次のようなものがあります。
申告書類の作成を税理士に依頼する
税務の専門家である税理士が、決算処理に携わり申告書を作成することで、税務書類の信頼性を高めることができます。
また、税務調査が入った場合にも、税理士が申告書を作成しているため、税務調査官の指摘にも税理士が適切に応答することができます。
税理士に税務調査の立会いを依頼する
税務調査の準備段階で必要な書類を不備なく揃えたり、質問されたりする点を想定するなどのサポートを受けられます。
税務調査官の質問や指摘についても、税理士が助言や補足をしてくれます。
書面添付制度を活用する
申告書類の作成を税理士に依頼する際に、「書面添付制度」を利用することで税務調査のリスクを減らすことができます。
税理士法第33条の2に基づく書面が添付された申告書について税務調査を行う場合、税務署は原則として税理士の意見を聞いてからでないと、税務調査に移れません。
税理士と税務署との間でやり取りが行われ、結果的に税務調査が行われずに済むこともあります。
まとめ
税務調査は、正しい税務処理が行われているかを税務署に確認される調査です。
突然の調査にも冷静に対応できるよう、日頃から帳簿や書類の整備を徹底しておくことが不可欠です。
調査の流れや対象範囲を理解し、税理士のサポートを受けることで、スムーズに対応できる可能性が高まります。
税務申告書の作成や税務調査でお困りの際は、ぜひ税理士にご相談ください。